花粉症のかたへ
花粉症は、スギやヒノキをはじめとする花粉によって起こる、アレルギー性鼻炎のことです。寒さが緩む春先に最も多くの患者が出ます。花粉症の症状では、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー鼻炎や眼のかゆみ、流涙などのアレルギー性結膜炎が最も多くみられます。まれに喘息やアトピー症状を併発することもあります。我が国で最も多いのは、地域差はありますが、春先にみられるスギ花粉症といわれています。花粉症にかかってしまった方の治療方法の基本は、薬を飲むことです。
花粉症治療での治療には大きく分けて
(1)抗アレルギー療法
(2)減感作療法
があります。
(1)は、花粉症の症状を出にくくする治療法(対症治療)です。
(2)は、花粉症の症状をそもそもなくす治療法(根本治療)です。それが「舌下免疫療法」です。
舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法とは「アレルギー症状を引き起こす原因物質を少ない量から身体に慣れさせて、アレルギー反応が起こらないようにする治療」のことです。従来の花粉症治療といえば、くしゃみや鼻水などの症状を薬で和らげる「対症治療」が一般的でした。一方、舌下免疫療法とは、原因物質を直接身体に触れさせて慣れさせることで、そもそもの発症を押さえることを目指す治療法です。
舌下免疫療法は、毎日、薬の服用が必要ですが、1日の治療にかかる手間はそれほどありません。1日1回薬を内服します。錠剤はすぐに飲み込まずに舌の下に留めておき、1分たったら飲み込みます。
舌下免疫療法の治療の流れ
舌下免疫療法は、スギ、ダニが原因のアレルギーと診断された患者さんが治療を受けることができます。薬の服用期間は、1日に1回少量から始めて、2週間は徐々に量を増やしていき、その後は3~5年にわたり継続して服用していきます。服用後5分間は、うがいや飲食を控えてください。スギ花粉の舌下免疫療法の場合、スギ花粉が飛んでいない時期も毎日治療を行います。
舌下免疫療法の治療の注意点
<服用時に避けること>
治療の前後2時間程度の激しい運動、アルコール摂取、入浴など
<副作用について>
口内炎や舌の下の腫れ、口の中の腫れなどの副作用が起こる可能性が、まれにあります。アナフィラキシーという強い副作用が出る可能性が理論的にはありますが、現時点では日本国内で発症したケースはありません。
花粉症予防のポイント
花粉症の症状を少しでも軽くするため、日常生活において次のことに心がけましょう。 新聞・テレビ等で花粉情報をチェックし、花粉が多く飛散している日は外出を控えましょう。 外出するときは、メガネ、マスク及び帽子を着用し、花粉のつきにくい綿や化学繊維の上着を着ましょう。 帰宅したら、玄関前で衣服についた花粉を払い落としましょう。 花粉が多く飛散している日は、ドアや窓を閉めましょう。洗濯物やふとんを外に干すことも、室内に花粉を持ち込むことになりますので避けましょう。 花粉症は症状がひどくなる前に対策を取ることが重要です。そのため、鼻水やくしゃみといった症状が認められた場合には、早めに医師に相談し、適切な診断と治療を受けましょう。
花粉症の薬(抗アレルギー療法)
花粉症の薬は、花粉によるアレルギー症状が発症する経路をブロックする薬です。点眼薬や点鼻薬のように花粉により生じた炎症を抑える薬もあります。
空気中を漂っている花粉が、私たちの体の中に入ってきます。この花粉が抗体を介して免疫細胞に接触すると、ヒスタミンやロイコトリエンなどのいくつかの化学物質を放出します。これらの化学物質が鼻の内部の神経や血管に作用し、くしゃみや鼻水、詰まりなどの鼻炎の症状を引き起こします。ヒスタミンやロイコトリエンの作用を抑えれば花粉症の症状が治まります。
これらの化学物質のうち、特にヒスタミンを介した経路が最も強く関与しやすく、多くの薬は「ヒスタミンを抑える薬」を中心に作られています。昔は眠気が強くなったり抗コリン作用による「口の渇き」を感じやすいなどの副反応がありました。しかし、その後改良され「ヒスタミンだけを抑える効果」を抽出し、より副作用が少ない薬が開発されるようになりました。現在の主流のお薬になっています。
その他にも、ロイコトリエンを介した経路を抑える「ロイコトリエン拮抗薬」、鼻を目の炎症自体を抑える「ステロイド点鼻薬や点眼薬」などがあります。
【抗アレルギー薬】
フェキソフェナジン:1日2回。眠気が少なく、車の運転も可能。小児も使える。
エピナスチン:1日1回。喘息にも使用します。
オロパタジン:1日2回。眠気が強いが「作用が強い薬」として使われやすい。
エバスチン:1日1回。比較的眠気は少ない。
ロラタジン:1日1回。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。
レボセチリジン:1日1回。ジルテックの改良版。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。
セチリジン:1日1回。妊娠授乳中にも使われやすい。
ベボタスチン:1日2回。皮膚科領域では使われやすい。
デスロラタジン:1日1回。クラリチンの改良版。比較的眠気は少なく、妊娠授乳中にも使われやすい。
ゼスラン:1日2回。第2世代でありながら、抗コリン作用やロイコトリエンなどの他のケミカルメディエーターも抑える。
ビラスチン:1日1回。最も眠気が少ないともいわれている。空腹時に内服。
ルパタジン:1日1回。眠気の頻度が強いが「作用が強い薬」として使われやすい。
【抗ロイコトリエン拮抗薬】
抗ヒスタミン薬が、即時アレルギーの作用であるヒスタミンをブロックするに対して、抗ロイコトリエン薬は、即時性アレルギーの鼻づまりだけでなく遅発性アレルギー反応である「ロイコトリエン」を抑える効果があります
プランルカスト:1日2回タイプ。抗ヒスタミン薬と相乗効果をもつ。小児で使われる。
モンテルカスト:1日1回。抗ヒスタミン薬と相乗効果。眠気などの副作用がない
【漢方薬】
花粉症で漢方薬を使うことがあります。鼻水や鼻づまりに使う漢方薬があります
小青竜湯
葛根湯加川芎辛夷
辛夷清肺湯
麻黄附子細辛湯
【鼻噴霧用ステロイド薬】
ステロイド点鼻薬は内服薬と違い全身への作用が少なく副作用は起こりにくいです。
アラミスト点鼻液:1日1回、各鼻腔2噴霧
ナゾネックス点鼻液:1日1回、各鼻腔2噴霧
エリザス点鼻粉末:1日1回。各鼻腔1噴霧、パウダータイプ
フルナーゼ点鼻液:1日2回。小児用もあり
リノコートパウダースプレー:1日2回、パウダータイプ
ベクロメタゾン点鼻液:1日4回。非常に短時間なのが特徴
【ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬の点鼻薬】
血管収縮薬が入っているものは、鼻の環境のためにも、なるべく短期的に使うべきです。なお、長期に使うと鼻の血流が低下します。
ザジテン点鼻液:1日4回。1回1噴霧。第2世代抗ヒスタミン薬
リボスチン点鼻液:1日4回。1回2噴霧。第2世代抗ヒスタミン薬
インタール点鼻液:1日6回。1回1噴霧。ケミカルメディエーター遊離抑制薬
コールタイジン点鼻液:3~5時間ごと、1回2~3噴霧。血管収縮薬とステロイドが配合
【目薬】
目の症状が強い場合は点眼薬を併用すると効果的です。内服薬とも相乗効果を発揮します。
① 抗ヒスタミン薬の点眼薬
点眼薬で多く使われるのは「第2世代抗ヒスタミン薬」です。緩和しないようならステロイド点眼薬を検討します。
アレジオン点眼液:1日4回タイプと持続が長い1日2回タイプの「アレジオンLX」がある
ザジテン点眼液:1日4回。1回1~2滴使用
パタノール点眼液:1日4回。1回1~2滴使用
リボスチン点眼液:1日4回。1回1~2滴使用
② ケミカルメディエーター遊離抑制薬の点眼薬
アレギサール点眼液:1日2回タイプ
アイビナール点眼液:1日4回タイプ
インタール点眼液:1日4回タイプ
ゼペリン点眼液:1日4回タイプ
③ ステロイド点眼液
オドメール点眼液、フルメトロン点眼液、リンデロン点眼液などある